姉妹探偵

第1編

『姉妹探偵』第1編 冷徹な天使と、慈悲深き悪魔026

姉は事もなげにそう言って、電話の発信ボタンを押した。 相手は、水谷川芽瑠先輩だ。 スピーカーから呼び出し音が数回鳴り、すぐに繋がった。『……はい、水谷川です』 先輩の声は、張り詰めていた。背後から怒号や電話のベルの音が微かに漏れ聞こえる。「...
第1編

『姉妹探偵』第1編 冷徹な天使と、慈悲深き悪魔025

やがて、画面を埋め尽くすように表示された言葉たち。 それらはどれも、彼女たちの「善性」を称えるものばかりだった。『困っている人を放っておけない』『いつも誰かのために動いていた』『雨の日、傘を貸してくれた優しい人』 それを見た瞬間、私の中に強...
第1編

『姉妹探偵』第1編 冷徹な天使と、慈悲深き悪魔024

琳久さんがキーを一つ押すと、その緑色の滝(演出)が消え、今度は本当に人間には追えない速度で、解析された情報が次々と書き込まれていく。 演出が終わった瞬間、アイちゃんの本領発揮だ。「へえぇ……アイちゃん、すごい」 私が感嘆の声を漏らすと、琳久...
第1編

『姉妹探偵』第1編 冷徹な天使と、慈悲深き悪魔023

姉は紅茶を一口飲むと、無表情で答えた。「快適だったわ。余計な雑音が少なくて」「出たよ、カホ節。あんたねぇ、少しは愛想ってもんを覚えないと。修学旅行の時もそうだったじゃん」「修学旅行?」 私が思わず聞き返すと、琳久さんが身を乗り出してきた。「...
第1編

『姉妹探偵』第1編 冷徹な天使と、慈悲深き悪魔021

そして今、姉が追い詰めている犯人は、あの時の男以上に歪(いびつ)だ。「愛しているから壊す」。「人間をモノとして愛でる」。 そんな矛盾し、ねじれ切った感情の濁流を、もし至近距離で浴びせられたら? 単純な「悪意」なら、まだ拒絶できるかもしれない...
第1編

『姉妹探偵』第1編 冷徹な天使と、慈悲深き悪魔020

そして今、姉が追い詰めている犯人は、あの時の男以上に歪(いびつ)だ。「愛しているから壊す」。「人間をモノとして愛でる」。 そんな矛盾し、ねじれ切った感情の濁流を、もし至近距離で浴びせられたら? 単純な「悪意」なら、まだ拒絶できるかもしれない...
第1編

『姉妹探偵』第1編 冷徹な天使と、慈悲深き悪魔019

姉はハンドルを切り、交差点をスムーズに曲がりながら、淡々と言った。「それは……、『トロフィー』と『スーベニア』の混合ね。あるいは、『部分愛(パーシャリズム)』による『物象化(オブジェクティフィケーション)』の極致」 出た。姉の悪い癖だ。  ...
第1編

『姉妹探偵』第1編 冷徹な天使と、慈悲深き悪魔018

張り詰めていた空気が、わずかに緩んだ。  姉は、宗像警部の葛藤など意に介さない様子で、再び遺体に視線を戻していた。「……始めるわよ、彩心。犯人は、7人を殺してもまだ満足していない。次の雨が降る前に、必ず見つけ出す」 その横顔には、天才として...
第1編

『姉妹探偵』第1編 冷徹な天使と、慈悲深き悪魔017

まるで犯人の思考回路を透視しているかのようなその言葉が、宗像警部の逆鱗に触れた。「貴様……!」 宗像警部が、姉に掴みかからんばかりの勢いで踏み出した。「まるで見てきたかのように語りやがって! お前がもっと早く動いていれば、この被害者は助かっ...
第1編

『姉妹探偵』第1編 冷徹な天使と、慈悲深き悪魔016

一つは、腕の先。  泥だらけの腕が、不自然に途切れている。  両の手首から先が、ない。  ギザギザに千切れたのではない。鋭利な刃物で、骨の継ぎ目からスパッと切り落とされた断面が、白く、赤く、乾いた状態でそこに在った。 そして、もう一つは――...